日向備長炭(Unama)のふるさと
“えこのは”で取り扱わせて頂いている備長炭は、宮崎県美郷町宇納間産。
美郷町は、宮崎県北部中央山間部に位置しています。面積は宮崎県の約6%にあたる
44,884ha、その約90%が山林です。さらに透明度の高い3つの河川を有しており自然豊かな
環境に恵まれています。
※美郷町は新しい町:東臼杵南部地域にある3村(旧南郷村、旧西郷村、旧北郷村)が対等
合併して、平成18年1月1日に誕生した町です。
宇納間は北郷地区の大字名です。
日向備長炭(日向木炭)の歴史
はじまりは江戸時代
日向備長炭に関する歴史は古く、江戸時代から続いています。延岡藩における製炭については、「1624年※、岡村助兵衛が当時の藩主有馬直純の認可を得て、
北方村二股、北郷村宇納間で行った」と記されています。※1624年:江戸幕府将軍は徳川家光の時代
繁栄と衰退
『和漢三才図会』という書物によると、1712年当時の日向木炭は紀州熊野炭に匹敵する良質な木炭であったことが記されています。
1764年には延岡藩が山国の貧困さから所得の増加を図るため、炭焼きに力を入れ始めました。その成果もあって、幕末には日向木炭の積み出しは年間40万俵にものぼり、大阪消費量の3割を供給していたとされます。
明治、大正、昭和初期には製炭業はますます盛んになり、1940年(昭和15年)には白炭窯の数が合計508基にもなりました。延岡市の近代工業である旭化成燃料の一部も補っており、里山経済の潤滑と文化の発展に大きく貢献してきました。
出典:『日向木炭史 宮崎県』(日向木炭史編纂委員会編)1965年(昭和40年)
しかしその後、1957年(昭和32年)ころからエネルギー革命により生産量、製炭者ともに減少し始めました。
そして、さらに追い討ちをかけたのが、昭和20年~30年代の戦後復興などによる木材需要の急増に伴い、政府が執った拡大造林政策です。里山の美しい雑木林を形成してきたカシ類などの広葉樹は伐採され、当時の建築用材になる経済的価値の高いスギやヒノキに置き換えられたのでした。
エネルギー革命と拡大造林政策によって製炭者は減少し、里山の美しい常緑樹林は影を潜めることになったのです。谷間に漂う青白い一条の煙と炭窯の存在を知らせる独特の匂いも、次第に途絶えていったのでした。
現在と未来
現在、北郷地域ではIターン者の参入もあり、炭焼き窯の数は約50基まで復活しています。炭の生産が連綿と続けられるようになっています。
アラカシは、20年から30年おきに炭木として伐採され、資源循環がなされる美しい常緑林が見られます。
多くの美郷町民の祖先が製炭業に何らかの形で関わり、暮らしてきた歴史があります。
その中には、備長炭の製炭技術やその他多くの技術・文化を持って移住してきた祖先も含まれており、
これらの祖先たちの働きが近世から近代にかけて地域文化や産業の発展に貢献し、都市部の生活燃料を支えてきました。
美郷町特有のカシ山の多い里山の景観や美しい河川も、これらの祖先たちのおかげで保たれてきたのです。
このように、美郷町には備長炭の確かな製炭技術と豊かな文化が脈々と受け継がれてきました。
しかし、美郷町がこれほど良質な備長炭を生産している産地であることは、宮崎県内はもちろん、美郷町内でも広く知られていません。
さらに、現在、備長炭の製炭者の高齢化や後継者不足により、製炭技術の継承や保存が困難な状況に陥っています。
"えこのは"では、日向備長炭を「日向備長炭(Unama)」と名付け、宮崎の誇りとして取り扱っています。
国内の数少ない備長炭の産地として、これからも良質な備長炭を生み出していって欲しいと願います。
◇◇◇美郷町の取り組み◇◇◇
美郷町備長炭製炭技術保存会を結成(平成26年11月24日)
里山に残る景観と山とともに暮らしてきた先人の暮らしや育まれてきた文化と歴史を顕彰すること、
また、それらの認識を深めると同時に今後の地方創生に資することを目的に、美郷町備長炭製炭技術保存会の備長炭製炭技術を無形文化財に指定し、
その技術の保存と継承、及びエネルギー教育、環境教育の資源としての活用を図ろうとされています。
炭材(アラカシ)の特性
美郷町の木炭材
現在、備長炭の三大産地は、和歌山県(紀州)、高知県(土佐)、そして宮崎県(日向)です。
紀州や土佐では、備長炭を製炭する際、技術面で比較的容易であるウバメガシの原木を用いることで、火の通りが良く熱効率が高い備長炭を製造しています。
しかし、宮崎県ではウバメガシの自生量が少なく、産業として成り立つ規模の自生がないため、美郷町では周囲の山々に豊富に自生する「アラカシ」(ブナ科)を代替材料として使用しています。
アラカシから備長炭をつくるためには高度な製炭技術が必要であるため、美郷町では他の地域の製炭技術を積極的に取り入れながら、自らの製炭技術を確立してきました。
アラカシの特性
アラカシの素材としての優位性は、十分な重さと堅さがあることです。
また、幹が比較的まっすぐであるため、炭窯に搬入しやすく、隙間なく入れられることから生産効率が良いため、備長炭の材として適しています。
植え替える必要がなく、伐採後の切り株から新たに十本ほどのヒコバエ(新芽)が出ます。これは、炭材を計画的に安定して調達できること、さらには山林や水資源の保全等の広範囲な地域の環境保護に貢献することを意味しています。
アラカシの炭は、表面のひび割れ等が少なく緻密でなめらかであり、極めて良質です。
燃料として使用するとき、ウバメガシの炭より軟らかく、火のつきが良くて火持ちも良いです。また熱源として並べやすいので、調理にも好都合です。